離婚協議書

協議上の離婚をする場合には、離婚について同意をしていれば足り、特に理由は必要ありません。夫婦間で離婚の話合いがまとまれば、離婚届を役所に提出することで離婚が成立します。時間や費用が節約できるもっとも簡単な離婚方法であり約90%がこの方法となります。しかし、財産分与や養育費など、離婚時に決めておいたほうがよいことを決めないまま離婚をしてしまいがちなところがあります。そのため離婚後のトラブルが発生しやすくなります。

お互いの今後のことですので、離婚で生じると考えられるさまざまな問題(金銭的なことや子供のこと)を検討し、話し合いの段階で問題を解決しておきましょう。急いで手続きを進めてしまわず、十分な準備をしてお互いに納得したうえで、離婚届を提出することが大切です。離婚する前に、夫婦間で財産分与、子供の親権、慰謝料などの問題についてしっかりと話し合い、口約束によるトラブルを防止するため、離婚協議書として書面に残しておきましょう。


離婚前の取り決め事項

離婚に際し取り決めをしておくべき主な事項は以下の通りです。

(お金に関すること)

財産分与の権利を請求できる期間は、離婚のときから2年、慰謝料は3年となります。

  • 財産分与の金額、分与方法
  • 慰謝料の金額、支払方法
  • ローンや借金の清算方法
  • 年金分割の割合
  • 生活費の負担について

(子供に関すること)

特に子供さんがいらっしゃるご夫婦の場合は子供さんの将来がかかっていますので、しっかりと話し合いをする必要があります。養育費、財産分与、慰謝料については、誰が、いくら、いつまでに、どのようにして支払うのかをきちんと決める必要があります。

  • 養育費の金額、支払方法
  • 子供の親権者、監護者
  • 子供との面接交渉の方法、場所、回数、時間子供の戸籍について

(離婚後の生活ついて)

  • 新居はどうするか
  • 今後の収入はどうするか
  • 離婚前の氏に戻すか、結婚後の氏を引続き使うか

離婚に関する取り決めは書面に残しておきましょう

協議によって離婚が成立した場合、当事者間で話し合って取り決めたことは、離婚協議書などの合意文書として書面にして残しておくことをおすすめします。個人間で作成した合意文書だけでは法的な強制執行力はないので、お互いに取り決めした合意内容を強制執行認諾文付きの公正証書にしておきます。

公正証書は証拠力が強く、また証書の条項に強制執行認諾約款といって、本契約に違反した場合には強制執行をされても異議を申し立てない、という文言があれば訴訟をすることなく強制執行ができます。重要点を踏まえて作成しないと、強制執行ができない場合もありますのでご注意下さい。弊所では、まずは電話やメールにて離婚に関するご相談内容をお伺いし、お客様の状況に合わせた具体的な進め方をご案内させていただきます。弊所では解決できない紛争事や交渉事が生じた場合は、ご希望により弁護士をご紹介させていただくことも可能です。


戸籍と性について

結婚した際に、夫を筆頭とした戸籍を作成した場合の手続きは、下記のとおりです。

(妻の場合)

1.従前の戸籍(両親の戸籍)に戻る

2.自分を筆頭にして、新しい戸籍を作成する

この場合、旧姓又は結婚時の性のどちらででも戸籍の作成が可能です。離婚をすると一般的には旧姓に戻りますが、「離婚の際に称していた氏を称する届」を離婚後3か月以内に家庭裁判所に届出を行うと、結婚中の性を名乗ることができます。この届出をすると、元の性に戻すのは難しくなりますので、よく検討したうえで提出して下さい。

(子の場合)

親権者が妻である場合、離婚をしたからという理由で、子の戸籍が母親に移るということはなく、父親の戸籍に入ったままとなりますが、「子の氏の変更許可申立書」を家庭裁判所に届出を行うと、戸籍及び性は母親と同じものになります。また、子を母親の戸籍に入れて、その母親が再婚した場合は、子の戸籍は母親の戸籍のままとなりますので、父親の戸籍に入れる場合は、養子縁組が必要となります。


離婚協議書作成のポイント

養育費等の現金の受取がある場合は、公正証書にする。

公正証書に、「強制執行認諾文言付公正証書を作成することに合意し、相互に公正証書の手続きに協力する。」等の文言を必ず入れてておきましょう。この文言を入れることにより、裁判をすることなく強制執行を行うとこができますので、時間、手間、費用の節約にもなります。

相手方の住所、連絡先が変更になった場合は、相手に連絡する旨の条文を入れる。

一般的に住所、連絡先が変更になったら「遅滞なく書面にて通知する」という文言を使うより、「10日以内に書留郵便にて通知する」と言うように、具体的な内容にしておく方がより好ましいです。

清算条項を入れておく。

「甲と乙は、上記の各条項の他、名義の如何を問わず金銭その他の請求を相互にしないこと、及び甲乙以外の者が本件合意内容には一切干渉しないことを相互に確認した」等の文言を入れることにより、離婚協議書の捺印以降、その他の財産の請求ができなくなります。

 

養育費の支払い期限をしっかりと決定しておく。

養育費は、一般的に「20歳に達する日の月まで」とすることが多いですが、「大学を卒業するまでとすることも可能ですので、子の成長を考慮しよく話し合い決めておきます。


離婚公正証書

公正証書とは、公証役場で作成する文書で、裁判の確定判決と同等の効力を持つ文書です。離婚協議書のみでは、法的な強制力がありませんので、確実に約束を守ってもらうためや、裁判で長い年月とお金をかけないためにも、離婚公正証書を作成されることをおすすめします。離婚公正証書にしておくことで、取り決めた金銭の支払いが滞った場合には、調停や裁判等の手続きを行わないで、強制執行することができます。離婚協議書は、正しい書き方をしていなければ、いざというときに役立たないこともあります。弊所は、公証人との調整業務にも慣れており、多くの方々の「離婚給付等契約公正証書」サポートを行ってきましたので、安心してご相談下さい。